月は、人類にとって長年の夢であり、月に住むというのは憧れでもあります。
そんな中、「月の土地が売られている」ことを聞いたりしたことはないでしょうか?
月の土地が実際に誰のものなのか、買えるのか?そんなみじかで遠い疑問、『月の土地の所有権』について解説します。
どの国の所有物なのか
どこの国のものでもありません。宇宙条約2条には(月に限らず火星など人類が将来住むことを計画している天体も含めて全て)どこの国家も所有を認められていません。
また宇宙条約6条では
「条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間における自国の活動につい て、それが政府機関によつて行なわれるか非政府団体によつて行なわれるかを問 わず、国際的責任を有し、自国の活動がこの条約の規定に従つて行なわれること を確保する国際的責任を有する。月その他の天体を含む宇宙空間における非政府 団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。 国際機関が月その他の天体を含む宇宙空間において活動を行なう場合には、その 国際機関及びこれに参加する条約の当事国の双方がこの条約を遵守する責任を 有する。」
とあり、宇宙に対する活動に対して自国が責任を持ち、監督を必要としています。
なので月の土地を販売するなどといった行為は許可が出るわけがないので、違法とされています。
宇宙条約
宇宙条約(Treaty on Principles Governing the Activities of States in the Exploration and Use of Outer Space, including the Moon and Other Celestial Bodies)は、国際連合によって1967年に採択された国際的な法的文書です。この条約は、宇宙の探査と利用に関する原則と規則を定めることを目的としています。
1条から17条まであります。
アポロ11号で立てた国旗何?
アポロ11号が月に到達した1969年7月16日に、宇宙飛行士ニール・アームストロング氏とバズ・オルドリン氏はアメリカ合衆国の国旗を立てました。しかし所有権を得ようとしたわけではありません。
国家の象徴としての意味合い
アポロ11号のミッションはアメリカ合衆国が主導し、アメリカの宇宙開発の一環として行われました。そのため、アメリカ国旗を立てることは、アメリカが宇宙探査のリーダーシップを果たしていることを象徴する行為だと考えられます。
ミッションの成功と国民の誇り
アポロ11号の月面着陸は人類の偉業として大きな注目を浴び、アメリカ国民に誇りと希望を与えました。アメリカ国旗を立てることによって、その成功を象徴し、国民の感情を表現したではないでしょうか?
宣伝や広報の意図
宇宙開発は科学や技術の進歩だけでなく、国家のイメージやプレステージにも関わる重要な要素です。アポロ11号が月に到達したことやアメリカ国旗の立てられた姿は、世界中に対してアメリカの宇宙開発の成功を示すメッセージとなりました。
結果、アメリカ国旗は月面に残されましたが、これは所有権を主張するための行為ではなく、象徴的な意味合いが強いということです。前述の通り、月の土地や資源の所有権に関しては、国際的な合意に基づいた枠組みが存在し、国家間の協力と共有が求められています。
【月の土地の利用】
宇宙条約が制定されたのは1967年とかなり昔のものです。その後何度かこういった宇宙に関する規定が制定されたのですが、あまり効力を持ったものはありませんでした。しかし近年の宇宙開発は著しいものがあり各国が月や火星などといった生活可能であると思われる天体に関する研究や計画が進められています。その結果、将来的に急速に宇宙開発が進み、新たな法的枠組みが整備される可能性は大いにあります。
宇宙探査は、科学や技術の進歩、人類の知識の拡大を目指す重要な活動です。将来的には、月や火星、他の宇宙の天体を利用するための国際的な規定や協定が改めて策定され、持続可能な利用が実現されることを期待しています。
月の土地の売買は可能か
国際的な枠組みでは、宇宙の資源や土地の私有化は禁止されています。それは月の土地も同じで、国際連合の宇宙条約2条には、
「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用若しくは占拠又はその他 のいかなる手段によつても国家による取得の対象とはならない。」
とあります。そのため、基本的には月の土地を購入することはできません。
当然ですが、月の土地を「買う」という概念は、地球上での不動産取引とはそもそも異なります。もし仮に、「将来、本当に月に住みたくて月の土地を買ってしまった!」という人は安心してください。法律的に違法契約であるため返金請求も可能だそうです。月を探査する際には、国際的な協力体制の下で行われ、研究や探査活動のための利用が主な目的とされています。
販売店もある
しかし、実際月の土地の権利を販売している業者があります。前述の通り、あくまで宇宙条約では国同士の取り決めで個人はその対象に含まれていない。とのことで合法的に月の販売を始めたそうです。ただ、宇宙の探索などには必ず政府の容認が必須であり、その権利を主張できるかどうかはわかりません。
月の土地を買えるということで父の日のプレゼントや記念としての購入が多いそうです。夢やロマンがありますね。
意外と住むのはキツい?月の住み心地
月の土地を買って、住みたい!という方がおられるかもしれません。では、月はどのような環境なのか紹介しようと思います。
まず、月の重力は地球の約1/6程度であり、地球上での生活とは全く異なる状況です。この低い重力下では、筋力の低下や骨密度の減少といった身体的な影響が起こります。
宇宙飛行士の人が地球に帰ってきてからリハビリをしている姿を見たことがあるのではないでしょうか。物体の移動や建物の構築も異なる方法が必要でしょう。次に、月の環境は極端な温度変化があります。月の昼間は摂氏100度以上になり、夜間は摂氏マイナス100度以下になることもあります。適切な保護や熱調節が必要であり、居住空間の設計には相当の工夫が必要です。極め付けに月の大気は極めて希薄でほとんど存在しません。これは月がボコボコのクレーターの原因の一つです。つまり、宇宙線や隕石からの保護が重要となります。防護システムが必要であり、住居や活動エリアの安全性を確保する必要があります。
こう聞くと住むのはなかなか難しそうですが、宇宙開発の進歩により、そう遠くない未来では月で生活できるかもしれません。
【まとめ】
月の土地については、「宇宙条約」によってルールが決定されていました。宇宙条約は1967年に開かれた国際連合の条約で、現在までに100以上の国が署名しています。
この宇宙条約の中には、月や他の天体の所有権について明確に定められた条文がありました。
つまり、この条約に従えば、月の土地は誰のものでもなく、全人類の共有財産と見なされているのです。
しかし、近年では民間企業による宇宙開発が活発化し、これらの企業が月面や他の天体に資源を探し、掘り出す計画を立てています。このような活動が増えると、現在の宇宙法に新たな課題が生じる可能性があり、今後の法整備や国際的な協議が求められるでしょう。
月の土地は現在のところ全人類の共有財産とされており、特定の個人や国家が所有権を主張することはできません。しかし、民間企業による宇宙開発の進展に伴い、これらのルールについての再考や更新が必要となるかもしれません。
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